くたくた読書生活

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『安達としまむら』 感想

 人間入間『安達としまむら』(2013年出版)の感想です。 

  上のはkindle版なので出版が一年遅いです。

  人間入間と言ったら『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』とか『電波女と青春男』とかが有名でしょうか。短編などもありますね。なぜ『安達としまむら』を読んだかと聞かれれば、百合ラノベだからと答えるべきでしょう。

 そうです。このラノベは表紙を裏切ることなく2人の女の子の関係の話です。

 

 学校をサボりがちな安達としまむら(黒髪が安達、クリーム色の髪の娘がしまむら)が体育館の二階で授業をサボっているところから物語は始まります。2人はどちらも真面目ではないので、よく授業をサボるのですが、たまたま体育館でサボっている時に偶然出くわし、サボり仲間のような関係になります。

 しかし、学校でしか会わないし、余計なことは詮索しないし、初めて学校外で出会った時はお互い気まずくなったりする関係でした。でも以外と積極的なしまむらは安達と出かけたり、しまむらの友人を連れて安達と遊んだりします。だんだんとその距離は縮まっていきます。ちなみにしまむらには友人がいますが、安達にはいません。しまむら以外。

 しまむらと仲良くなるうちに安達はいろんなことがわかってきます。しまむらの家だったり、妹がいること、しまむらに友達がいること、しまむらと2人っきりでいたいと自分で思っていること。

ようするに、好きなんだろうなぁと思った。 p240

安達としまむら』人間入間 

 ということで、安達はしまむらと一緒にいるうちにしまむらに自分の特別になってほしくなってしまったようです。

 1巻ではまだどうして安達が島村を好きなのか、しまむらはどう思っているのかはわかりません。というのも、しまむらはふんわりした外見でおだやか、友達が多いですが、自分のことをあまり話さないし、人間関係の立ち回りが上手い。でも、真面目かっていうとそうではないし、髪も染めてるし、でも妹の面倒もよくみる。なかなかミステリアスというか、キャラがつかめません。

 何気ない日常の中で、安達はそんなしまむらの行動の一つ一つに一喜一憂したりしてます。こっちまでドキドキです。

 

 さらに、このラノベを面白くしているのが視点です。それぞれのエピソードで語られるのは安達かしまむらの一人称視点での物語です。つまり、安達の視点で物語が進んだり、しまむらの視点で物語が進んだりしており、その場その場の相手の考えはその視点の主人公の想像でしかないわけです。それを読む我々は彼女ら2人がどんな人物で、どんなことを考えているかは物語を辿ることで知っていくことができます。しかし、そんな我々にさえ、そのエピソードのその場面では一つの視点を強制されもう一人の感情はわかりません。

 例えば、安達の視点が物語が語られる時に、安達は勢い余ってしまむらに頭をなでることをお願いしてしまいます。この後で、この時安達はすでにしまむらを意識していることがわかるのですが、この場面での2人はまだ友達同士。『後悔と、凝固したなにかを何度も乗り越えては絶望して…』(p237)とあるように、安達のドキドキや後悔がよく伝わってる一方、『「ふむ。」しまむらの反応は短い。一歩距離を置いて…』(p236)のようにしまむらの行動も安達を通してしかわからない。安達にはこう見えている。安達にはしまむらのこの時の気持ちはわからない。私たちもわからない。ここに、2人の視点を行き来している読者である私たち特有のなんとも言えない高揚、共感、恐怖、ドキドキがあると思います。さっきはしまむらこう言ってたよ、とか、安達はこう思ってるのにとか。それにお互いが言葉を交わさなくても、よく観察し合っていることは私たちにはわかってしまいます。

 

 キャラクターについて言えば、一見クールに見える一匹狼・安達のほうが、甘えん坊でしまむらのことばかり意識していて、そのギャップがいい。安達かわいい。一方のしまむらにはなんかふわっとした印象をもってしまっている。実際面倒見がよくて、優しい。でも、髪も染めてるし、そもそも授業をサボってるような不良少女で、だから安達とも会えた。友達にも深く踏み込もうとしない。安達とは特にその距離感を測っているように見えてしまう。ともかく2巻が楽しみです。すぐ買います。

 

 可愛い女の子の日常が好きな人、淡い百合が好きな人。主人公の人間関係の距離感に興味がある人。ぜひ手に取ってみて欲しい一冊でした。