くたくた読書

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卒論メモ①

 僕にも卒業論文提出の時期が迫りつつある。詳しい内容は書かないと思うけど、卒論を書くために読んだ本のいくつかの感想をメモしておこうと思う。

  僕の卒論は西洋絵画や音楽に関係があるので、そういった分野の知識をつけるため現在勉強中である。とくに音楽については全くの門外漢であるので基礎的な知識を身に着ける必要があるし、クラシック音楽についても聴くことが求められそうだ。

 以前にブログに書いた、『近代絵画史』も勉強の一環だ(というか西洋文化を大学で勉強しているが美術史の授業を取ったことがない)。

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・中川右京『3時間でわかる「クラシック音楽」入門』

3時間でわかる「クラシック音楽」入門 (青春新書INTELLIGENCE)

3時間でわかる「クラシック音楽」入門 (青春新書INTELLIGENCE)

 

  まずクラシック音楽というものがわからないので読んだ。クラシック音楽とは何か。愛好家は何を、どのようにクラシックを聞いているのかを簡単にわかりやすく書いている。後半には、短いながらクラシックの歴史も載っており、とりあえず聞いておきたい作曲家と作品、指揮者も教えてくれる。初心者の僕としてはなかなかわかりやすい本であった。多少筆者の見方が押し出されているようにも思われたが、初めて踏み入れる広大なクラシックの世界には、ある指針がある方が入って行きやすいように思う。

 クラシック愛好家の中では、その指揮者も重視されているというのは知らなかった。どの曲を聞くかだけではなく、誰の指揮で聞くかも意識しておきたい。

 

佐渡裕『僕はいかにして指揮者になったのか』

僕はいかにして指揮者になったのか (新潮文庫)

僕はいかにして指揮者になったのか (新潮文庫)

 

  『3時間でわかる「クラシック音楽」入門』では指揮者の偉大さについても知らされたので、指揮者についての本を手に取ってみた。それも本物の指揮者の方が書いた本。この本を読む前に指揮者として知っていたのは『3時間で…』出てきたカラヤン小澤征爾だけである(小澤征爾と並ぶ佐渡裕を見つけたバーンスタインが出てきたかは覚えていない)。

 率直に言ってとても面白かった。それは指揮者というのが熱く、エキサイティングな仕事であるからというだけではなく、佐渡裕自身の文章が面白いからである。僕は音楽の世界のセオリーや習慣はよくわからないので、彼が時々常識破りというか、非常識な音楽家・指揮者のような人物と自分で書いていたが、それはわからない。しかし彼の音楽、とくに指揮をすることに対する暑さは伝わってきたし、素直に音楽について語っているところはなるほどと思わされたし、彼のヨーロッパでの体験は夢中になって読んだ(前者は、コンサートはつまらないこともあるけれど、とてつもない出会いもあること。ヨーロッパの話は単に僕がヨーロッパ好きってのもあるけれど)。

 卒論に直接関係はないけど、指揮者というのが少しわかった気がする。どうだろうか。それに読み物として単純に面白い。とくに関西弁や彼のツッコミが面白い。音楽にかかわらずみんなに読んで欲しい一冊である。

 

芥川也寸志『音楽の基礎』

音楽の基礎 (岩波新書)

音楽の基礎 (岩波新書)

 

  基礎的な音楽の基礎をと思い読んでみたのだが、正直全くの初心者にこの本は難しいし、また退屈であった。多少音楽をやっている者からしたら、さらに音楽の理論というか基礎がわかるのかも知れない。いずれにしろ僕にはもっと基本的な本、教科書が必要なようである。音符の読み方とかそいういの。

 

小沼純一サウンドエシックス これからの「音楽文化論」入門』

 音楽関連の本をもう一冊。これは音楽文化について。音楽と音楽周辺についての問題を提示していく。答えは教えてもらえないが。問題を見つけること、考えることが重油なのである。

 クラシックに詳しくなくても、流行りの歌を知らなくても全然問題なく読める。「音楽文化論」入門であり、むしろ人文学全体に問題を広げるような本で、とても面白いし音楽との関わり方を改めて考えることになる。

 僕が印象に残った部分のみ簡単に書いておく。まず音楽とは一回性を持つものであるということ。とくに昔、レコードなどの記録媒体などができる前では、音楽は演奏するものであり、毎回毎回その演奏は変わるのである。現代に生きる僕、ーとくにレコードやカセットテープをろくに知らず、CDのみ知っている身ーとしては、それは確かな確認であった。今では、CDはもちろんテレビやスマホなど音楽を媒介してくれるものが生活の一部になっている。ライブやコンサートにもほとんど行ったことがないので「一回性」という音楽の特性にあまり実感を覚えられない。また音楽は、見ることと違い、耳で聴く。それはまぶたを閉じれば視覚を遮断することができるというのとは異なり、自動的に、受身的に聴こえる。これも重要なポイントだ。しかし意識的に聴くのと、耳を通り抜けるのではまた感じ方が違うだろう。

 また簡単に全体の構成を振り返っておくと、1〜6章が音楽について。7〜9が音楽とその周辺。それぞれ音楽と視覚的なもの、身体、生命。そして最後の10章は芸術と経済(または音楽と経済)、聴くこと、残るもの、とまとめることができる。

 音楽そのものや関連分野を考えるにあたり、音楽の知識はもちろん文学や哲学、自然科学も関連させ、時には感覚的に、時には科学的に音楽についての考察を行う。より音楽を楽しく聞くことができる良書である。また大量の参考文献がついているのも非常によかった。